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渋柿庵日乗 六八


災害廃棄物調査速報(その4)宮城県名取市

2011年5月11日
 仙台市の南に位置する名取市の災害廃棄物処理状況を調査した。名取市は仙台空
港がある自治体である。仙台空港が津波に襲われる場面や、海岸から数キロ内陸に
ある仙台南部有料道路が防波堤の役目をして津波を食い止める場面などのビデオが
ニュースで放送され、何かと話題になった。
 名取市の被害は想像以上だったが、財政力のある自治体なので、仙台市ほどでは
ないが、災害廃棄物の撤去も徐々に進んでいる印象があった。ただし、まだ陸上自
衛隊による被災者の捜索も続けられている。
 宮城県の計画によると、市の災害廃棄物仮置き場はあくまで一次仮置きである。
今後、県が大規模仮置き場を設置した場合にはそこに移動し、県が建設する計画の
焼却炉又は破砕施設で処理されることになる。災害廃棄物は一般廃棄物であり、処
理義務は市町村にあるため、県が処理するには地方自治法252条の14による委
託をしなければならない。しかし、まだ県の大規模仮置き場は用地選定の段階であ
り、いつになるかはわからないため、市による一次仮置きが当分続くものと思われ
る。
 なお、仙台市と違って名取市の災害廃棄物仮置き場では、分別が不十分という印
象だった。一度未分別の廃棄物を大量に堆積してしまうと、あとから分別すること
が困難になるため、県の処理施設ではかなりの問題を生じることが予想される。実
際、関係者に話を聞くと、泥まみれの災害廃棄物を焼却しても、熱釈減量は50%
程度ではないかとのことだった。この場合、大量の燃え殻を処分するため大規模な
管理型最終処分場の建設も必要になる。
 また、これから夏季になるにつれて一次仮置き場からの悪臭も問題になりそうだ
った。さらに長期間堆積が続いた場合、発酵の熱がこもって自然発火する危険もあ
る。千葉県では10メートル以上かつ1年以上の木くず系建設廃棄物の大量堆積現
場で火災発生が相次いだ経験があるが、東北地方は積雪もあり気象条件が違う。そ
れでも仮置きが長期化する場合には火災対策が必要であるように感じた。

※次回は宮城県気仙沼市を取り上げます。

津波に襲われるビデオが流され、その後いち早く復旧したことで震災被害の象徴的存在の一つとなった仙台空港。復旧はしたものの救援物資輸送に利用されているだけで、一般人の利用客の影はなかった。周辺の住宅地はまだガレキの山である。
滑走路のわきにある災害廃棄物の仮置き場。空港復旧のために撤去されたものと思われる。飛行機の視界に影響がないように比較的低く積まれている。
滑走路のわきにある被災自動車の仮置き場。これも空港復旧のために移動されたものと思われる。車両の損傷度は比較的低い。
滑走路わきにある海上保
安学校宮城分校の敷地。
ここも被災自動車の仮置
き場となっていた。手前
の軽自動車は損傷が少な
いため、所有者に引取り
を要請しているものと思
われるが、土手の上なの
で自力での移動はできな
い。
海上保安学校宮城分校に隣接した航空大学校仙台分校の玄関脇に、軽飛行機がモニュメントのように残されていた。敷地内にはやはり被災自動車が仮置きされている。
閖上(ゆりあげ)漁港を見下ろす場所にある戦没者慰霊塚。4枚ある慰霊碑のうち3枚が落ちていた。
戦没者慰霊塚から見た閖上漁港。何もなくなっている。被災者に対する顕花が痛ましい。
戦没者慰霊塚には慰霊の卒塔婆が何本も立っている。何もなくなり、閖上漁港の水面が見える。対岸に災害廃棄物仮置き場の巨大な山が見える。
戦没者慰霊塚から陸側を望むがやはり何もない。道路は復旧し、道路左側のガレキの撤去が徐々に進んでいる。
閖上漁港内の災害廃棄物仮置き場。あまり本格的な分別はされていない。
閖上漁港近くの公営住宅と思われるコンクリートの建物は津波の直撃で基礎ごと傾いていた。
田園地帯の中に設けられたかなり大規模な災害廃棄物仮置き場。進入路を新設中だが、ガレキは再利用していないようである。
災害廃棄物の仮置きの状況。分別はほどんとしていない。長期間保管すると腐敗による悪臭や火災の心配がある。
仙台空港直下の防潮堤は津波によって激しく破壊されていた。100トンはあるかと思われる堤防天端のコンクリートが、何本も数十メートル陸側に流されていた。破壊された堤防の直上1キロメートル足らずの位置に空港のターミナルビルがある。

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渋柿庵主人