I-Method

渋柿庵日乗 一八


グラスノスチ

2010年3月1日
 お正月からスタートしたI−Method Forumも2ヶ月がすぎ、今日から3ヶ月目に入った。
 2月からはじめた産廃小説「ZERO〜産廃Gメン伝説〜」も、当ブログ「渋柿庵日乗」も、ありがたいことに好評だが、「Iメソッドセミナー」は、ちょっと難しいのか、他のコンテンツほどの反響が聞こえてこない。メインコンテンツなのに、ちょっと残念だ。ご意見のメールを頂戴したいと思う。

 3月の新コンテンツとして、「東京都優良性認定制度のI−Method検証」をスタートした。
 I−Method Forumの主眼とするところは、情報公開制度を活用した産廃処理・リサイクル業界の優良化支援だから、Iメソッドセミナーに並ぶメインコンテンツに育てていきたい。



 情報公開制度というものは、民主主義と重大なかかわりがある。
 民主主義というと選挙を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、これだと選挙期間中しか民主主義がなく、選挙が終われば政治家の暴挙を許すことになってしまう。こんなことをいつまでくりかえしたところで、民主主義は実現しない。
 しかし、情報公開による選択の効果は24時間365日続く。
 政府と企業の情報公開によって、市民は毎日毎日、安定した政策を信頼して仕事に打ち込み、未来の安心のもとに現在の生活を楽しみ、安全で安価な商品を購入することができる。
 逆に情報公開がなければ、市民は不安と不信を胸にいだきながら、政府と企業を盲目的に信じるしかないことになる。

 民主主義を無視して、政府と企業が結託し、参政権や言論の自由を制限し、経済的な権益を独占することを開発独裁という。これはインドネシアのスカルノ、スハルト大統領、フィリピンのマルコス大統領などの直系財閥による独占と独裁を典型とする、アジア、ラテンアメリカの政治経済体制をさす言葉として、グレゴールが最初に使ったとされる。開発独裁は、東側と西側とを問わず、限られた資本を限られた分野に集中しなければならない開発途上国に現れ、極端な貧富の格差をもたらす。ケ小平の「富められる者から先に富め」というスローガンのとおりだ。その原点は日本の明治政府の富国強兵だったのではないかと思う。

 明治時代に完成された官僚制度が戦後もほぼそのまま温存された日本には、よきにつけあしきにつけ、明治以来の政府と銀行・企業との癒着構造が残っている。むしろそれが戦後の経済成長の原動力になったくらいだったが、今はそれが政策や予算の硬直化の大きな原因になっている。それを打破する方法があるとすれば、情報公開をおいてほかはない。それさえ徹底的にやれば、政治も行政も経済も、おのずから変わる。

 民主主義の根幹だとされる選挙には不正や陰謀がつきものだ。アメリカにだって選挙の不正はある。日本以上に現職政治家や与党が圧倒的に有利になるように、選挙制度や選挙区割が巧妙に設計されている。だから言われているほど政権交代はおこりやすくはないのだが、それでもオバマ大統領の誕生のように劇的な政権交代が起こるのは、さまざまな面で情報公開が進んでいるからだろう。もちろんオバマを当選させた選挙参謀にしたたかな戦略があったことを否定はしないし、金融バブル崩壊による経済危機が追い風になったこともそのとおりだろう。
 現在、オバマ大統領の人気が凋落している。それは経済政策がうまくいっていないからというより、政策決定過程が不透明で不公平感があるからではないだろうか。トヨタプリウスのリコール隠しがバッシングされているのも同根のように思う。



 情報公開はさまざまなリスクを伴う。
 虚偽の情報を公開すれば、政府も企業も制裁を受ける。アメリカでは、虚偽の情報公開が発覚しただけで、エンロンのような巨大企業ですら一瞬にして消えることが珍しくないようだ。1兆円企業だったアメリカ最大の産廃処理会社、ウェイストマネジメント社が倒産したきっかけも不正経理発覚による株価暴落だった。(株主は代わったが、現在は1兆円企業として復活している。)

 ゴルバチョフ大統領はグラスノスチ(ガラス張り)という政策を進めたが、その結果、ソ連のラストプレジデントとなり、超大国がクーデターで消滅した。悪名高かったソ連軍はモスクワ市民に発砲するよりも国家の消滅を選んだ。それに学んだ中国共産党は情報統制を続けている。
 情報公開に取り組んだ政治家やジャーナリストや社会派芸術家は、しばしば保守的な勢力から暴力や脅迫を受けてきた。命を落とした人も少なくなかっただろう。



 ささやかながら、私もかつてI−Methodによる公開情報の分析結果を公開したとき、分析対象とした業者の一部から「おまえの影響力がわかっているのか、すぐに公開をやめろ」とご忠告を受けたことがある。それでもまた性懲りもなく「東京都優良性認定制度のI−Method検証」を、実社名付きで公開することにしたわけだ。分析の客観性については、十分な配慮をしたいと思っているが、合格とならなかった業者は不満だろう。しかし、そういう業者からこそ、前向きの相談を期待している。

 Iメソッドの審査基準は明確で、「公開情報に説明のできない矛盾がないこと」の一行につきる。審査結果が不合格になるのは、業務内容が不良だからではなく、情報公開が不十分だからにすぎない。もちろん、ほんとうに不正行為を行っているのなら話は別で、不法投棄以外の説明ができない矛盾が発見されるだろう。

 私の懲りない取り組みを喝采してくれる人もいれば、苦々しく思う人もいるだろうが、評判を気にせずに最後までやりとげたい。インターネット社会では、私自身の弱気以外に、この取り組みを邪魔できるものはなにもない。

先頭のページ 前のページ 次のページ 末尾のページ
渋柿庵主人