I-Method

渋柿庵日乗 三一


コロンブスの卵

2010年5月26日
 17日東京、24日大阪、25日名古屋と、3回連続のI−Methodセミナーを、日経BP環境経営フォーラムの主催で開催していただいた。2時間30分と、比較的時間に余裕のあるセミナーだったので、受講者のみなさんには、実際に公開データ解析を体験演習してもらった。
 これまでもI−Methodのセミナーは何度も実施しているが、今回はグラフ付きの分析表による演習であり、東京、神奈川、大阪の優良性認定業者の分析例を紹介するなど、内容も以前のセミナーより充実していたので、納得していただけたのではないかと、自分なりにちょっと安堵している。
 セミナー参加者の中には、このHPの閲覧者もいらっしゃって、視聴者参加型イベントみたいな感じでもあったし、セミナー終了後の交流もできて、とても楽しかった。
 さらに当HP独自の優良性認証も第一号認証2社を先週末に公開したところであり、I−Methodの普及に弾みがつけばと期待している。



 そこでこの機会に原点に立ち返り、I−Methodとはそもそもなんなのかということを、ここで一度総括してみたい。
 もとより、I−Methodとは、産廃業者用に特化した財務分析法である。いまさら新しい財務分析法など開発する必要があるのか。もしかして、あやしい投資分析法のたぐいかと思われる方もいるかもしれない。まあ確かに世にMethodというのは数あるけれど、あやしさがつきものだ。
 銀行などで一般的に使われている財務分析法では、利益が出ていれば評価がよくなり、利益の出し方までは問われない。利息を滞りなく払ってほしい銀行的には、利払い後税引き前利益、つまり経常利益が一番重視される。
 だけど、不法投棄でどんなに大きな利益をあげていても、よい会社ではありえないだろう。そんな会社は明日にも許可が取り消されるかもしれないのだから、どんなに儲かっていても、実はハイリスクなのだが、銀行が使っている財務分析では、そうしたリスクを評価できないので、儲かっていれば融資案件はたいていOKになる。
 どんなに高度な数学を駆使しようと、結局利益の額面しか見ていない既存の会計学では、利益を上げている会社がハイリスクだという評価にはなりえない。利益しか評価しない会計学では、経済・金融至上主義にしかなりえない。株価を操作するための粉飾決算が横行しているのはそのせいだ。

 不法投棄の証拠を会計書類から発見することを原点としたI−Methodは、利益を評価するのではなく、利益の出し方を評価することを主眼にしてる。
 「この会社の利益率は確かに高いが、稼ぎ方に問題がありそうだ」ということを的確に指摘できる財務分析法は、ほかに類例がないのじゃないかと自負している。
 実はこれはそんなに難しいことじゃなく、むしろコロンブスの卵みたいに単純なことだ。
 I−Methodの原則は12年前に発見したときからずっと変らない。「売上高は処理能力に見合ったものでなければならない」という明快な原則だ。処理能力の何倍も売上のある会社は、かならず不正を行っているはずなのだ。
 産廃業界用に開発したI−Methodだが、この原則はどの業界でも通用するはずだから、食品業用、金融業用、医業用など、さまざまなI−Methodを開発できるのじゃないかと、このごろ思っている。
 何年か前、工業米にしか使えない汚染米を食用米に偽装して利益を得ていた会社が摘発されたことがあったが、事件の報道を見ながら、I−Methodを使えば1秒で不正を見抜けたのにと感じていた。

 産廃業者の中には施設稼働率が10%なのに黒字の会社もあれば、施設稼働率が理論的にはありえない200%なのに赤字の会社もある。I−Methodを使うと、どうしてそうなのかということが、比較的容易に説明できるし、どちらの会社のリスクが高いかもわかる。どうすれば利益を上げながらリスクを下げられるかもアドバイスできる。
 つまるところ、I−Methodとは、利益に含まれている社会的なリスクを、会計学的な手法の範囲内で数値化する技法である。
 利益の質を判定できるI−Methodを基にすれば、リスクマネジメント、コンプライアンス、CSR、CSIなどの社会的な経営理念と連携した新しい会計学を構築できる。
 こうした観点から、I−Methodを拡張するためには、あらゆる業界の収益構造に通じなければならない。いよいよもって同志を募りたいところである。



 お正月に立ち上げたI−Method Forumも、5ヶ月がすぎようとしている。
 最近のアクセス数は一日300〜400人、ページビューは一日500〜1000ページとなっており、さらに日を追って増えてきている。昨日(25日)のアクセス数は、374人、838ページだった。(個人サイトなので身内のアクセスは1件もない。)閲覧していただいているみなさんのご支援のおかげで、年間10万人、30万ページビューのペースまでこぎつけることができたが、優良産廃処理業者を支援する標準サイトとなるには、最初の一里塚にも到達していない。千里の道ははるかだ。
 優良産廃業者支援ページと、小説ZEROが人気を二分しているみたいだが、うれしいことに、ご意見のメールは当ブログ「渋柿庵日乗」あてのものが一番多く、とても大きな刺激を受けている。
 小説にいただいたご意見も、ストーリーに重大な影響を与えている。これはWEB小説ならではだと思う。
 個人サイトらしい素人くささを忘れず、小さくてもオフィシャルなHPにはできない多彩多芸なサイトにすべく、さらに精進していきたいと、ますます気を引き締めているところである。

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渋柿庵主人