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渋柿庵日乗 三九


決勝戦と投票日

2010年6月18日
 17日、民主党と自民党がマニフェストを発表した。前回の総選挙のときは民主党のマニフェストがよくもあしくも出色だったが、今回は違う。両党のマニフェストは内容がとても似ている。菅首相と谷垣総裁が、どちらも官僚的だということもあるだろうが、それ以上に感じるのは、参院選挙後の大連合である。そのためには、あんまり政策が違わないほうがいい。

 参院選の結果は、投票を待たずして、だいたい見えてきた。非改選をあわせて、民主党が過半数に届くか届かないかというレベルだ。民主党は圧勝ではないが、負けでもない。自民党は勝利ではないが、党が消えるほど大負けではない。中途半端なマニフェストが、中途半端な選挙結果を暗示している。
 これから3年間、政権交代がないことが確定してしまう自民党は、参院選後に分裂するだろうと見られている。選挙前に自民党を出た組は、それを見越して先手を打ったつもりだろうが、議席が取れなければ新党を作った意味がない。自民党と離婚した公明党も、そろそろ再婚を考えたくなる時期に来ている。上手に民主党幹事長から降りた小沢が、またしても政界再編のキーマンになりそうだ。

 ワールドカップ南ア大会で、日本がカメルーンに奇跡的に勝ったために、この1週間、どこもかしこもサッカーの話題で持ちきりだった。参院選のことなど話題にする人はいなかった。
 昨日、髪を切りに行ったが、カットする人、シャンプーする人、カラーする人、来る人来る人みんなが「ワールドカップ見ましたか?」と聞いてきた。
 日本中が浮き足立っているのを見ると、やっぱり日本人として、日本が勝つのがうれしいと思うのは、昭和でも平成でもなんにも変らないんだなと思った。たった1勝しただけなのに、ムードががらりと変って、突然、自分もヨハネスブルクで一緒に参加しているんだという気がしてきたというわけだ。1勝の効果はすごい。

 サッカーというと、僕くらいの世代だと、ペレとか、ベッケンバウアーとかいった名前を最初に思い浮かべる。僕が一番好きだった選手は、「空飛ぶオランダ人」と呼ばれたヨハン・クライフだった。チーム全員が1つの意志で動いているような美しいプレーがたまらなかった。いまでは常識となったオフサイドトラップに何度も何度もかかったブラジルのスター選手たちが、最後には戦意喪失して歩き出してしまったシーンが忘れられない。野球ならさしずめ完全試合だった。僕にとっては、クライフがひきいていたころのオランダチームがサッカーの理想であり、チームプレーの理想だ。リーダーになるなら、ああなりたいと思っていた。
 17日は韓国・アルゼンチン戦があって、メッシのドリブルが冴えていた。マラドーナ監督もかっこよかった。19日には日本がオランダと戦う。これはもう選挙どころじゃない。

 誰が決めたか知らないが、ワールドカップの決勝戦も参院選の投票日も7月11日だ。このまま参院選はもりあがることもなく、どの党も勝ち点1で終わりそうだ。

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渋柿庵主人